Google re:Work 学習と能力開発

マネージャから退いてしばらく経って、組織や人事について再度考え直したいと思ったのでGoogle re:Workを再読している。理解よりも実践が難しいと感じたものだけれど、マネジメントに行き詰まって即効性を求めた時期とは違った読み方ができるのではないかと思った。

直近の課題として、技術的な取り残されを解決したいという最近の動きから最初に「学習と能力開発」から読み始めた。

従業員間での学習プログラムを導入する

はじめに

学習の文化がビジネスの成功に繋がる話。単純な話としての技術力向上というよりは、求められるものが変化しても柔軟に対応できることで競合優位性を得られるということ。

実際に他社の学習の様子から学ぶことは多いし、十数年前に従業員の多い環境を求めて転職したのも学習文化のある環境を求めてのことだった。あれから仕事に追われて成長が止まってしまったのを取り戻したいのが今。ちょうどタイミングや条件が揃ってきたというのはある。

社員同士のトレーニングで伸びていくというGoogleの事例は理想だと思うけれど、能力バランスや向上心の差などをどうツールで埋めていくのかを読み解いていきたい。

学習目標を決める

組織として何を得たいかという命題は難しい。全体最適を考えるほど一般的な研修などに落ち着いてしまって従業員のモチベーションに繋がらないことが多かった。

従業員が学びたいと思っているということ、従業員同士で教え合うことができる内容であること、を洗い出すことがまず難易度高いのであるなあ。会社全体の責任として行うべきと書かれているが、まずは開発組織など小さなところから始めるのはアリなのだろうか。

1対1のメンタリングはペアプログラミングに近い形か。オフィスアワーは回答者のモチベーションが維持できれば望ましい解決とも言える気はした。雑談会のような形の中で知りたいことが聞けるような流れはよさそうというのが最近の周囲の雰囲気としてあるが、参加者の意識がまばらなのはまだ解決されていない。

目指すべきものはまずは適切な学習の機会を適切な従業員に提供することであり、そこに全員が参加することを強制する必要はないのか。しかしタイミングもある気がするのだよなあ。自分も少し前までならばモチベーションが底をついていたので学習意欲が湧かなかったのであった。

さておき、何を得たいかというと情報や技術が不足していることによって発生する機会損失をなくしたいという感じに近いかなあ。うまい言語化が難しい。

「学び」を組織文化の一部にする

機会とフィードバック。

何をもって学びとするかという話は若干あるものの、ルーチンワークを毎日こなすのでもなければ日々の業務の中で常に学びは発生しているとはいえ、既存の技術をなぞって知識不足を補うことを学びと感じられない気持ちはある。

業務においてはレガシーシステムの保守よりも新規案件で新しい技術の導入などに携わったほうが学びの機会は当然多く実のあるものになるが、全ての従業員に公平にその機会を与えられるかというと難しい問題はあり、学びに対するモチベーションの差に繋がっているような気がしている。

学びのためのコストを組織として別途計上するかというのが20%ルールのような制度に繋がってくると思ってしまうが、ここでの話はそういうことでもないのだよな。。

「自分で学ぶよりも同僚に教わるほうが効率よく学べる」というのは同意できる。組織のコアバリューとの関連付けは理想的な形に思えるけれど、この辺りはいくつか実践しないと具体的なイメージに繋がらないのでもう少し考える。早期の導入は入社からのタイミングとなるとそれまでに組織作りが成功している必要があるか。

勉強会なり読書会なり雑談会なり機会をつくることはできても意義に賛同できる人が増えないと継続が難しい。初期は誰かの犠牲の上に成り立つのかそうでない手法があるのか。これまでの成功事例を考えると全員に知識がないケースよりも明確なロールモデルが身近に存在しているほうが成立しやすさがあるけれど。

ファシリテーターの募集

前項で考えていたことを裏付けるような感じがしたけれど、やはり熱意と専門知識を持ったファシリテーターは必要。不在の場合は次の育成という話になってくるのか。

参考資料は具体的なアプローチこそ提示されていないものの、ファシリテーターとして意識するべきことがまとまっている。

ファシリテーターのスキル開発

ワークショップは実際に体験したわけではないが資料からイメージを感じとる。

成人学習者

恥ずかしながら「成人学習者」という単語を知らなかったのだが、子供に対する教育と成人に対する教育は区別するべきだという考えがあり成人学習者は子供とは異なる性質を持つのだという。

成人学習者をイメージしてみると、「すでに一定の知識がある一方で固定観念に囚われそうである」「自分にとって有用かどうかを軽率に判断してしまいそう」「プライドが高く素直に学習できないのではないか」というような若干ネガティブな印象がいくつか思いついた。

少し調べてみると、「学習者自身が主体的に学ぶ」「過去の経験を生かして学ぶことができる」「何を学ぶべきかを理解した上で課題解決に取り組むことができる」などの特徴が挙げられておりなるほどであった。

プレゼンテーションの三原則

「トーン」「テンポ」「間のとり方」。

あまり話すのは得意ではないのでトーンやテンポは比較的苦手というか自然にはできない。内容の区切りなどで間を取るのは比較的意識的に行っていると思っている。

ファシリテーションの定義

プレゼンテーションの主体が本人であることに対してファシリテーションの主体は他の参加者であり、ファシリテーターは参加者は議論が進行し目的を達成するための手助けをするものだと理解している。結論に誘導するような発言をしたり、誰が発言するのかをコントロールしたりするのは誤った手段であるように感じる。

プレゼンテーションとファシリテーションに優劣があるわけではないだろうが、プレゼンテーションは知識を一方的に与える形になるので、どちらかといえば成人学習者ではなく子供などに対する手法に適しているのではないだろうか。

このセクションには特に正解などは示されていないのではたしてどうなのだろう。

知識の呪い

これはよく分かる。

前提知識の少ない相手にどのように伝えるか、どのような情報が不足しているのか、何が知りたいのかは資料をよく書いていると意識しがちではある。自分の場合は逆に情報過多になってしまいかえって読みづらいというパターンが多いと思っている。内容の優先度をうまくつける必要がある。

厄介な学習者

「冗舌な学習者」「皮肉屋の学習者」「無口な学習者」「やる気のない学習者」。

効果的な対処が示されており勉強になる。人数が少ないほうが安心する人がいる、2名1組だと積極的に関わらざるを得ないというのはなるほどである。

まとめ

なんんとなくファシリテーションのテクニックというよりは講師の心構えに近いものを感じたが、参加者のマインドをうまく誘導するという意味では通じるものがあるのかもしれない。ファシリテーションで難しいと感じる脱線や議論の発散を防ぐようなテクニックをもっと身につけたい。

効果的なフィードバックの提供

ここでもトレーニングやコーチングについて言及されている。講師っぽい。

功績の評価と表彰

ファシリテーターのモチベーションを維持させることも重要。ファシリテーター同士のコミュニティというのは内側からの刺激があって有用に思われる。

見落としがちな注意点

先にファシリテーターの育成を行うよりも参加障壁を下げて徐々に改善していくほうが望ましいという話。

上層部からは許可だけではなくサポートを受けるというのは、学習環境を整備するための購入支援とかカンファレンス参加費の補助なんかを指すのだろうか。学習文化の成果について定期的にフィードバックするのも、参加者がやっていてよいのだという気持ちをしっかり持てるのではないかと思った。マネージャー的な立ち位置からもそういった活動をちゃんと把握しておく必要があったよなあ。と。

ガイドを読み終えて

組織の話なので当然ではあるが、個人としてどうしていくかよりも学習文化をどのように根付かせるかという点にフォーカスされていた。どちらにしても学習目標を立てて、学習環境を整えてすすめることが大事である。

直近では、積ん読や内容忘れている技術書を再読してあらためて知識の下支えをしていきたい。